前回のエントリ(下記)で僕はこんな風に書いていた。
一応公開されている任天堂のゼルダTotKの特許は舐めたつもりだが、出願されているだろうと思った内容のものが全てあったわけではなかった。具体的には下記のようなものがあるのではないかと期待していたのだが、なかった。
これは大きな間違いで、トーレルーフとモドレコの特許はもっともっと前に出願されていたのだ。下記の2件の特許だ。
特開2021-186370(P2021-186370A) … トーレルーフの特許
【公開日】令和3年12月13日(2021.12.13)
【発明の名称】ゲームプログラム、情報処理装置、情報処理システム、および、ゲーム処理方法
【出願番号】特願2020-96009(P2020-96009)
【出願日】令和2年6月2日(2020.6.2)
これはもう見たままトーレルーフの特許である。
要約に書かれている解決手段も下記のようにシンプルである。
【解決手段】情報処理装置は、プレイヤキャラクタと地形オブジェクトとが少なくとも含まれる仮想空間内において、プレイヤの操作入力に基づいて地形オブジェクト上においてプレイヤキャラクタを移動させる制御を行う。
また、情報処理装置は、少なくともプレイヤキャラクタの上方に天井となる地形オブジェクトがあり、かつ、当該プレイヤキャラクタの上方であって当該天井のさらに上方に、当該プレイヤキャラクタを配置することが可能な地形オブジェクト上の移動先があることを少なくとも満たす場合に、プレイヤの操作入力に基づいて、当該プレイヤキャラクタを当該移動先まで移動させる。
しかし【発明の詳細な説明】を見ると、もうちょっと丁寧に書いてほしかったなという気がしないこともなかった。特に課題のところ。
【発明が解決しようとする課題】
従来においては、プレイヤキャラクタを高く飛び上がらせることができる一方、プレイヤキャラクタの上方に地形オブジェクトがある場合には、当該地形オブジェクトよりも上方にプレイヤキャラクタを移動させることはできなかった。それ故、本発明の目的は、プレイヤキャラクタの上方に地形オブジェクトがある場合において当該地形オブジェクトの上方に当該プレイヤキャラクタを移動させることができるゲームプログラム、情報処理装置、情報処理システム、および、ゲーム処理方法を提供することである。
いやいや「
だいたいそもそも下から上に通り抜けることができる床なんてスーパーマリオ3にもいっぱいあったじゃないか…。
というわけで課題の記載はいまいち雑なものの、判定方法については下記のような図を持ちいて少し丁寧に説明されていた。
請求項には移動中にアニメーションを表示することとか、天井にマーカーを表示するとか、そのマーカーは条件を満たしているかどうかで表示が変わるようにするんだとかそういうことが記載されているものなどがあった。
特開2021-186373(P2021-186373A) … モドレコの特許
【公開日】令和3年12月13日(2021.12.13)
【発明の名称】ゲームプログラム、ゲーム装置、ゲームシステム、およびゲーム処理方法
【出願番号】特願2020-96049(P2020-96049)
【出願日】令和2年6月2日(2020.6.2)
これは図だけ見てもよくわからないが、このゼルダTotKをプレイしたことがある人が下記要約を見れば明らかにモドレコの特許だとわかる。
【解決手段】操作入力に基づいて選択された指定オブジェクトに対して、操作入力に基づいて開始指示された時点から順に遡って過去にメモリに記憶された位置および姿勢に戻る復帰移動をするように、仮想的な物理演算に用いられる運動に関するパラメータを変化させ、仮想的な物理演算に基づいて、プレイヤキャラクタ、指定オブジェクト、およびそれら以外のオブジェクトを含めた仮想空間内の状態を更新させる。
そしてトーレルーフの特許に続いて、この特許の課題の説明もちょっとやる気がない。
【背景技術】
従来、仮想空間内に配置されているオブジェクトの動きを利用するゲームプログラムがある(例えば、非特許文献1参照)。【非特許文献1】”ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド“、[online]、任天堂株式会社、[令和2年4月24日検索]、インターネット(URL:https://www.nintendo.co.jp/zelda/index.html)【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記非特許文献1で開示されたゲームプログラムでは、仮想空間内で動作するオブジェクトにおいて、当該動作を戻す動きを利用することはできなかった。
それ故に、本発明の目的は、仮想空間内におけるオブジェクトの位置や姿勢を戻しながら、当該戻る動きを利用可能とするゲームプログラム、ゲーム装置、ゲームシステム、およびゲーム処理方法を提供することである。
いや強引すぎるだろこの課題。
「仮想空間に配置されているオブジェクトの動きを利用するゲームがあった」
→「でもそのオブジェクトの動作を戻す動きを利用することができなかった」
そもそも「動作を戻す動き」って何だよってツッコミを入れざるを得ない。BotWでそんな課題があったなんて知らなかったぜ。
でもこの特許についてそんなところはどうでもいいのだろう。その先はざっくりこんなことが書かれていた。
- 所定範囲内のオブジェクトについて、時間毎の位置および姿勢を時間経過に沿ってメモリに記憶される。ユーザ操作があったらその記憶した位置と姿勢を逆方向に再生する
- そしてそのような動きをするように物理演算の運動に関するパラメータを変化させて、プレイヤキャラクターを含む他の物体の動きに影響を与える
- 戻る動きは途中でユーザ操作によって終了させることができるようにしてもよい
- 戻る動きをするときの経路を表示してもいい
- 戻る動きをさせるオブジェクトを選択できるようにするため、ユーザ操作で選択モードのような状態(選択可能状態)に入ることができる。選択可能状態では選択できるオブジェクトを他と違って見えるように表示したりするとよい
たしかにモドレコのとき、戻る動きを無理矢理させられてるのは選択されたオブジェクトだけで、それ以外の物体はそのオブジェクトの影響を受けつつ通常の物理演算的な動作をしている感じだし、それを特許の文面に書いていくのはわりと大変そうだなと読んでて思った。
特開2021-186376(P2021-186376A) … 落下中のプレイヤーキャラの姿勢の特許
【公開日】令和3年12月13日(2021.12.13)
【発明の名称】ゲームプログラム、情報処理装置、情報処理システム、および、ゲーム処理方法
【出願番号】特願2020-96141(P2020-96141)
【出願日】令和2年6月2日(2020.6.2)
これも同じ日に出願されている特許で、全然中身を読んでいない状態ではあるけど代表図面がかなりわかりやすく、落下中のプレイヤーが弓を構えたときの姿勢についての特許出願のようだった。下向きの場合には真っ直ぐ下向きの姿勢になるんだけど、所定の角度よりも上を向いたときは直立で横に向いた姿勢になるということが代表図面に示されている。
今回紹介した3件の特許はどれも出願日が2020年6月2日となっている。6月9日から開催予定されていたE3でこのあたりのフィーチャーを含んだ映像が公開される予定だったのだろうと思われる(実際にはCOVIDの影響でE3は中止となり6月に映像が公開されることはなかった)。