スプラ3が良い出来だったし、これは特許出願できるアイデア満載じゃねえか!!って思ったので特許が出てないか調べてみた。基本的に新製品に関する特許は世の中に発表される前に出願する必要があるが、出願から1年間1年半は公開されない*1ので、スプラ3にかかわる特許のうち今公開されているものがすべてというわけではない。
(2023/5/3追記: ここで漏らしていたものや、その後に公開された他の興味深い特許について下記に追記を書いたのでそれも見てやってください スプラトゥーン3の特許(part2) - naoya2kの日記 )
検索してすぐに見つかるのは次の3件(+1件)だった。
特開2022-124257(P2022-124257A)
【公開日】令和4年8月25日(2022.8.25)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム、
【出願番号】特願2021-21913(P2021-21913)
【出願日】令和3年2月15日(2021.2.15)
これはわかりやすいイカノボリの特許だった。
要約文も下記のように明瞭だ。
ユーザキャラクタが壁面における第1状態の領域上にいる場合において、操作ボタンの入力が継続されている間、ユーザキャラクタに予備動作を行わせ、少なくとも操作ボタンの入力が終了した場合に、ユーザキャラクタを壁面上で第1状態の領域と他の領域との境界まで移動させる。ユーザキャラクタが境界に到達した場合、当該境界からユーザキャラクタをジャンプさせる。
出願日が2021年2月15日であることが注目だ。この3日後の2月18日にはニンテンドーダイレクトでイカノボリやイカロールが公開されているのだ。
特開2022-124256(P2022-124256A)
【公開日】令和4年8月25日(2022.8.25)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム、および、情報処理方法
前述のイカノボリの特許と連番になっているこの特許だが、わかりやすいイカロールの特許出願だった。同じく2021年2月15日出願。
【解決手段】ユーザキャラクタが潜伏状態において第1方向に移動中に、ジャンプボタンの入力と、ユーザキャラクタを第2方向に移動させることとなる方向操作入力とが行われた場合、速度条件と第1方向条件とが満たされる場合は、ユーザキャラクタを即座に第2方向に方向転換させるとともに、ジャンプさせる。速度条件は、ユーザキャラクタが高速で移動中のときに満たされる。第1方向条件は、第1方向と第2方向との差が大きいときに満たされる
特開2022-122576(P2022-122576A)
【公開日】令和4年8月23日(2022.8.23)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム、および情報処理方法
これがとても面白いキャラメイクのときの特許で、僕はこの特許を見て初めてスプラ3のキャラメイクのときの演出について完璧に理解できた。
【課題】キャラクタを構成する複数のパーツをカスタマイズする際に、次にどのパーツを変更すればよいのかユーザが容易に理解可能な情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム、および情報処理方法を提供する。
【解決手段】複数のパーツのうち、少なくとも一部の複数のパーツを、それらの少なくとも一部がそれぞれ対応するアクセサリによって覆われた非露出パーツとした初期状態で、キャラクタを仮想空間に表示し、初期状態のキャラクタに対して、複数の非露出パーツの1つの非露出パーツに対応するアクセサリを移動させることによって当該1つの非露出パーツを露出させるシーンを再生する再生処理、および当該再生処理によって露出されるパーツをユーザに変更させる変更処理を、複数の非露出パーツに対して順次実行する。
キャラメイクのとき最初自キャラはサングラスとマスク着用でさらにフードをかぶっているが、マスクをはずして肌の色の選択をさせ、次にサングラスを外して目の色を選択させる。こんな風に新しく見えるようになった身体の部分について選ばせることでわかりやすくキャラメイクをさせるという内容だ。
実際のキャラメイク動画があった(下記)ので見たらたしかにそうなっていてすごい。
特開2021-102066(P2021-102066A)
【公開日】令和3年7月15日(2021.7.15)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法、情報処理システム、および情報処理装置
こいつはマップ画面にキャラの位置を表すマーカーを表示するときの工夫についての特許だ。しかし何が狙いなのかを流し読みしてもピンと来ない。要約部分だけだと全然わからない。
【課題】仮想空間内における情報をより正確に把握可能なマップ画面を提供すること
【解決手段】所定のオブジェクトを含む第1の3次元仮想空間を第1の仮想カメラで撮像して第1の画像を生成する。また、当該第1の3次元仮想空間に対応する3次元モデルにより構成されるマップオブジェクトを生成し、所定のオブジェクトの位置を示す標識オブジェクトをマップオブジェクト上に配置する。そして、当該マップオブジェクトを第2の仮想カメラで撮像して第2の画像を生成する。このとき、マップオブジェクト上に配置された標識オブジェクトについて、第2の仮想カメラの視点から見てマップオブジェクトによって隠される部分と隠されない部分とが異なる表示態様となるようにして第2の画像を生成する。
代表図面を見ても全然わからぬ…
どうも下記の画像のようにマップ画面でキャラのマーカーを表示するとき、壁に隠れた部分については暗く表現することによって、大きな段差の境界付近にキャラが居たときに下側に居るのか上側にいるのかをわかりやすくするという効果があるようだ。
何気ないマップ画面にも工夫が凝らされており、そしてそれをちゃんと特許出願しているのはとても偉い。
ところでこの特許は特願2017-002093(特開2018-110659)の分割出願となっている。大元の特許はスプラ2のときに実装されたものに対する特許だったのだろうと思う。
さて、ここまでは最近公開された特許を紹介したが、スプラトゥーンにはもっと基本的な、インクで地形を塗って戦う、という根本的な特許が存在している。その特許が下記の4件で、それぞれベースの特許と、そこから分割出願となったナワバリバトル、ヒーローモード、通信対戦の特許になっている。恐ろしいことに全部が審査請求を経て特許として成立している。
つまりスプラトゥーンはあと15年程度の間、任天堂以外の会社が似たようなものを作って売ったり配ったりすることができないのだ。請求項は結構広くなっていて強い特許のような気がする。個別に解説しても冗長になるだろうから興味のある人はリンク先の特許庁のページを確認してほしい。
特許5980266
特許6283072
特許6543361
特許6561155
*1: (2022/9/22修正) id:gebecさんにブクマで指摘いただいた。2021年2月18日のニンテンドーダイレクトに向けていくつかの特許が出願されたから、これらの特許がいま公開されて僕らが確認できるようになっているのであって、まだ公開されていない2021年3月以降スプラ3発売までに出願された特許が他にも複数あることは容易に予想される