スーパーマリオワンダーのリスポーンの特許と、ゼルダの伝説ToTKのスクラビルド(じゃなかったウルトラハンド)の特許

仕事がしんどすぎて久しぶりに任天堂の特許を検索したところスーパーマリオワンダーらしき特許が大量に出願されていたことに気づいた。

この2023年11月から12月にかけて出願された18件の特許は図面とかを見た感じスーパーマリオワンダーに関連する特許のようだった。一番上の2つはレンダリングに関係するものなので読みたいと思っている。ちょっと時間と気力がなくて全部チェックするのはすぐには無理。なので一番最初に見た特許について紹介しようと思う。他の特許もマルチプレイ関連が多いような気がする。

 

特開2023-169896(P2023-169896A) - 死んだあとのリスポーン位置を決める特許

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2023-169896/A3A009FAA3611A376237881353491653546A12F903EB012F0094BD5E17CB8B33/11/ja

【公開番号】特開2023-169896(P2023-169896A)
【公開日】令和5年11月30日(2023.11.30)
【発明の名称】ゲームプログラム、ゲームシステム、およびゲーム処理方法
【出願番号】特願2023-132926(P2023-132926)
【出願日】令和5年8月17日(2023.8.17)

【要約】
【課題】適切な位置にキャラクタを出現させることができるゲームプログラム、ゲームシステム、およびゲーム処理方法を提供すること。
【解決手段】ゲーム空間内の所定の位置を所定のキャラクタの出現予定位置として設定する。出現予定位置が、所定のキャラクタが出現可能な位置の場合は、当該位置にキャラクタを出現させる。一方、当該位置が、所定のキャラクタが出現できない位置の場合は、当該位置に探索中オブジェクトを配置し、所定のキャラクタが出現可能な位置に到達するまでの間、当該探索中オブジェクトをゲーム空間内で所定距離移動させて、当該移動後の位置において所定のキャラクタが出現可能か否かを判定する処理を繰り返す。そして、探索中オブジェクトが所定のキャラクタが出現可能な位置に到達すれば、当該位置に所定のキャラクタを出現させる。

 

これを見てスーパーマリオの特許だとは普通は思わないかもしれない。マリオの特許かどうかを素早く判定する方法は、図面を見ることだ。この特許には下記のような図面がある。これはマリオだ。

特開2023-169896の図4

さてしかしこの特許の課題とか解決手段とかを見てもあたりまえのことしか書いてないのである。「リスポーンできる場所ならすぐリスポーンするんだけど、そうじゃない場所だった場合には困るだろ? だからリスポーンできる位置まで仮のキャラを移動させてそこでリスポーンするんだよ」という。

ところでスーパーマリオワンダーにはマルチプレイ時の復活に関して下記のような説明がされていた。

ミスをすると「タマシイ」となってさまよい、カウントが0になる前に他のプレイヤーにふれることでその場で復活!

スーパーマリオブラザーズ ワンダー : マリオも仲間も一緒に冒険 | Nintendo Switch | 任天堂

 

この内容が請求項6に書かれていた。

【請求項6】
  前記所定のキャラクタは、プレイヤの操作に基づいて移動制御され、前記ゲーム空間内のオブジェクトとの衝突判定が行われ得るプレイヤキャラクタであり、
  前記プレイヤキャラクタが移動制御可能な状態で前記出現予定位置にプレイヤキャラクタを出現させる、請求項1に記載のゲームプログラム。

 

つまり、、この特許からの視点では、上記のタマシイのシステムは、ゲームを成立させるための制約としてのルールづけではなく、あくまで「その位置でリスポーンできるかどうかを判定するための一つの方法」として「タマシイをユーザーに操作させて他のキャラに衝突したとき、そこをリスポーン可能な位置(リスポーンしたあとにゲームが続行できる位置)と判定する」というような説明になっている感じである。

 

いや、確かに、単純に「他のキャラにぶつかるまで移動させないとリスポーンできないんだよ」ってのはなんか、それってゲームのルールですよね。特許じゃないですよねみたいな話になりそう。

でもだからってそれを、
「死んだ位置でリスポーンしたら無限に死ぬから、いい位置にリスポーンさせる方法が必要
 → そのリスポーン位置をプレイヤーに知らせるために、そこまで移動する間の仮のキャラを表示したりするんだよ
 → その仮のキャラをプレイヤーに操作させて他のプレイヤキャラに当たったら、そこはリスポーン可能位置と判定するのもそのうちの一つだよね」
みたいな流れで説明しているのは… このタマシイのシステムが、このゲームの開発中に本当にこういう流れで試行錯誤として生まれたのか、それとも特許として出願するために考え出されたロジックなのか、どっちなのか、自分は割と気になる。

 


 

特許7397237 - ゼルダの伝説ToTKのスクラビルドの特許

さて以前にToTKの特許がいっぱい出てたというエントリを書いていたのだけど、その時点では公開されていなかったスクラビルドウルトラハンドに関する特許が去年の12月に登録されていたようだった。それがこの特許73927237である。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-7397237/FF578A14C4ABCDE3EBEEEC7832A1FE5B4FCA31F362192A473C5A88996DEF3557/15/ja

【特許番号】特許第7397237号(P7397237)
【登録日】令和5年12月4日(2023.12.4)
【発行日】令和5年12月12日(2023.12.12)
【発明の名称】情報処理システム、情報処理プログラム、情報処理方法、および情報処理装置
【出願番号】特願2023-523122(P2023-523122)
【出願日】令和4年3月3日(2022.3.3)
【要約】
仮想オブジェクト同士を接続して複数の仮想オブジェクトからなるオブジェクトを生成する場合にユーザビリティを向上させることが可能な情報処理システムを提供する。情報処理システムの一例は、複数の仮想オブジェクトのうちの第1オブジェクトをユーザの選択操作によって選択し、選択した第1オブジェクト、及び、複数の仮想オブジェクトのうちの第2オブジェクトのそれぞれの接着位置を示す接着オブジェクトを生成する。ユーザの接着指示に応じて、第1オブジェクトと第2オブジェクトとをそれぞれの接着位置において接着する。

つまり、A,Bの2つをくっつけるような操作をやるときに、

  • ユーザはそのうちの1つだけを選択する(選択して操作する)
  • A,Bの接着位置を示す接着オブジェクトをつくって表示する

みたいなことがポイントだとしている。ここでの接着オブジェクトは、例えば下記の図16にある78で示されているものであり、これは自分も「これ特許で出願されそうだな」って思っていたところだった。

図16

特許明細書の文面には、この接着オブジェクトのことだけではなく、リンクが持ち上げて動かしている物体(明細書内では「選択オブジェクト」と書かれている)と他の物体との位置関係をわかりやすくするために、選択オブジェクトの像を他の物体に投影するとか、中心点を描画するとか、プレイヤーキャラの動きに合わせて選択オブジェクトがどう動くかとか、さらには、所定の解除条件を満たす入力がなされた場合には接着が解除されることなどが記載されている。

既にこの特許の分割で 特開2024-015493 が出願されている。これは「オブジェクトそれぞれに、他の箇所よりも優先的に接着位置となるような位置が設定されている」というものだ。

他の分割出願が今後どれだけ増えるのかは要ウオッチかもしれない。

 

(2024-02-05) id:sailorojiさんからスクラビルドじゃなくてウルトラハンドだと指摘を頂きました。指摘ありがとうございます。なぜ間違えたのだろう…