太陽光発電と蓄電池のある家に住んで1年が経過しました

miro氏の太陽光発電+蓄電池のエントリを読んだ。東京都は補助金がすごく出るのですぐに元が取れる的な話でした。

家庭用太陽光発電+蓄電池をつけて1年が経った|MIRO

 

一方で自分は横浜市太陽光発電と蓄電池のある家に昨年引越して同じくちょうど1年が経ったところで、だから上記エントリとちょっと比較しつつ自分の収支も公開してみようと思いました。

 

横浜市は補助がないんだよ!

横浜市では補助金は出ない。自転車で行ける距離である東京都だと200万円以上の補助金が都から出ているのにこちらではまったくゼロ。あまりの格差にクラクラしそう。

現在、横浜市では「電気自動車(EV)」、「プラグインハイブリッド自動車(PHV)」、個人向けの「太陽光発電」・「蓄電池」の補助は実施していません。

 

カーボンニュートラル事業推進課(旧環境創造局環境エネルギー課)における補助事業のご案内 横浜市

 

でも、たとえ補助が出なくても、いま新築を建てるときに太陽光発電と蓄電池をつけないという選択肢は自分にはなかった。正しい日本人としてカーボンニュートラルに向けてできる限りの節電と創エネをやっていく必要があるのだ。

それにあとで公開する収支の通り十分元はとれそう。

 

自分ちの設備の概要

自分ちの設備は下記のような感じ。

miro氏は360万円のシステムだったとのことだがこっちは約200万円で、えらく差があった。

この差はどこからきているかというと、まず蓄電池の容量が半分以下しかないこと、自分がこのシステムを含む諸々の見積をしたのが2022年の3月頃で円安やインフレが始まる直前だったこと、そして自分のはハウスメーカーへのOEM品だがmiro氏のものはパナソニックで高級品だということ、のような気がする。この費用が安いことがこのあとの収支での利回りにものすごく影響している。

 

収支(1年目)

自分の1年目の収支は下記となった。

 



 

基本的にはmiro氏と同じフォーマットにしてみたのだけど、事前予測はしてなかったので予測比は出していない。

左側が各月の実績値。

  • 太陽光発電の発電量
  • 家庭全体の電力消費量
  • 太陽光発電のうち、売電した量(のこりは自家消費)
  • 電力会社から電気を買った量

発電量の青いセルは、年間で一番発電量が多かった月である。一方で消費量の赤いセルはそれぞれ夏と冬で電力消費量がピークだった月の数値を示している。

右側は具体的な収支。

  • 電力消費量から逆算した、本来の電気代
  • 電力会社から買った分の電気代
  • 電力会社へ電気を売った額
  • 差し引き収支(本来の電気代 - 実際に買った電気代 + 電気を売った額)
  • システム設置費用(196万円)に対する表面利回り
  • 設置費用を回収するのにかかる年数

本来の電気代を計算するときの単価は、その月の電気代の請求から算出した平均電力単価を使った(単価としては4月5月は25円/kWh程度だったがその後は18~22円/kWh程度で推移していた)。

 

自分もmiro氏と同じような感じで、おおむね毎月1.5〜2万円くらい、年間で約19万円の回収があって、補助金がなかったにもかかわらず投資額に対する利回りが10%近くあり、10年ちょっとで回収できる見込みとなった。

 

ほんとうだろうか。

 

太陽光発電+蓄電システムは10年で本当に回収できるのか?

さて、自分の1年間の収支によれば、補助金がない自治体であっても設置費用は10年で回収できるという結果になっており、これを信じるなら設備の設置費用は太陽光発電を導入しない理由にはならない。

「だからみんな導入すべき。絶対元は取れる」みたいに短絡的な結論にもっていってこのエントリを終了してしまってもよいのだが自分はそうはしない。このエントリに乗っている僕の収支を単純に信じてはいけない、いくつか疑うべきポイントがあるのでそれを説明する。

 

  • 去年の横浜は異常に日照時間が長かった
    去年の実績を参考にするときに一番注意しないといけないのがこれだ。2023年の横浜の日照時間は2410時間だった。下記の気象庁の統計によればこれはなんと統計以来最長だったのだ。わりと外れ値である。
    気象庁|過去の気象データ検索

    横浜市の過去30年の年間日照時間。横軸が年、縦軸は日照時間(単位h)


    つまり、去年と同じ発電量を毎年期待することはおそらく正しくない。最近では2006年の日照時間は1667時間しかなかった。次の1年は昨年度と比べて発電量が2/3になってしまうかもしれないということだ。

    たとえば平年の発電量は去年の75%、売電量が2割減、買電量が3割増と仮定して計算すると、年間収支は昨年度実績の19万円ではなく14.5万円になり、回収に13.5年かかることになってしまう。

  • 10年経ってFIT終わったらどうなるんでしたっけ?
    去年や今年に太陽光を設定した場合、FITによって設置後10年間は買電額が1kWhあたり16円で買いとってくれることが確定するので、売電額の見通しがたてやすかった。しかし10年後以降は売電額がどのようになるかは現時点では全く不明である。
    太陽光発電が普及しすぎて本当に二束三文(1円/kWhなど)でしか売れなくなっているかもしれないし、逆にインフレが進んでもっと高く買いとってもらえるようになっているかもしれない。

  • 電気代が安くなってしまったら回収できないんだけど
    昨年の電気代は高かったと思う。年間平均で22円/kWhだった。このエントリの収支も当然それで計算している。
    来年以降、突然原発が稼動する、政府が補助金をバカみたいに増額する、国際的に天然ガスがめちゃくちゃ安くなる、などの要因によってもし17円/kWhになったりすればその分だけ収支も計算上は減ってしまい、回収に必要な年数も14年とかになってしまう。
    まあ今後は賦課金はしばらく3~4円/kWhで推移するだろうし、託送料金分の9.92円/kWhが劇的に減ることもあまりなさそうなから15円/kWhを切ることはないと思うが。

  • そもそも僕のような省エネ生活ができる人は少ない
    自分たちの家族はかなり省エネに全振りした行動を取っていると思う。「本来消費額」のところを見てもらえばわかるとおり、今回の太陽光発電がなくても月の電力量料金が1万円を大きく超えることはないし、年間の電力量料金も15万円以内である。
    夫婦と子供1人が暮らしていて、オール電化で、12月~1月に月500kWhしか使わなかった、というのが一般的な家庭だとは自分はあまり思わない。日中にもっとたくさん電気を使う人であれば今回の自分の結果よりも断然収支のプラスが大きくなるだろうと思う。一方で夜間に電気をたくさん使う人であれば…それでも太陽光発電システムとしての収支はあまり変わらないのではないかと思う。トータルの電気代が自分よりも大きいことで、電気代の削減効果が小さく見えてしまうところはちょっと残念に思われるかもしれない。

自分の場合はとにかく10年~15年で元が取れる。FIT終了後は売電額は下がるだろうとは思うが、蓄電池の交換が必要だったとしてもその後の収支黒字化は容易いと思う。

パネルは30年、パワコンは15年くらい持つという話だ。一方で蓄電池は10年、15年経ったら相当にヘタってくると思うが、そのときに
「ほぼ故障しているようなもんだし交換必須だな」になってるのか、
「交換しなくてもあと5年くらい平気っぽいけどいい機会だから交換しようかな」になってるのか、
「思ったよりも全然OKだからあと10年くらいイケんじゃね?」になっているのかはいまいち予想できない。

 

長々書いたけど、太陽光+蓄電池のトータル収支、自分のケースでは補助金なしでもぎりぎりプラスになりそうだと思っている。だから自分はこれを他の人に「ぜったいやるべき」と勧めるかというとちょっと違うような気がする。本気で考えるなら結局自分のライフスタイルで試算して納得した上で選択するしかないし、5年後10年後の電気代がどのようになるかの予測も難しい。

自分はトータルで赤字になっていたとしても「太陽光発電ちょっとおもしろいから体験としてはいいよね」みたいに思ってポジティブに考えちゃうと思う。自分は1年住んでみてエコキュート太陽光発電と蓄電池システム、それから家の空調などをそれぞれ違うメーカーがバラバラに開発していてうまく連携できていない、でもこれをうまく成立させるのは難しそうだということを、割と身を持って実感できたのがよかった。ちょっとでもそういう体験したい人で、付けれるチャンスがあるなら絶対つけるべきだというようなことは思った。