スプラトゥーン3の特許(part2)

去年9月にスプラ3の特許をいくつか見つけて紹介していたがそのあと検索しているとさらにいくつか特許出願が見つかった。昨年8月に出願された特許がいくつか公開されているのは新規だが、昨年9月の記事を書く時点ですでに公開済で見逃がしていたものもあった。網羅的に見れていないことがバレバレであるが少し興味深いと思ったものを追加で紹介する。

 

特開2023-11545(P2023-11545A)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2023-011545/E3A86521D5ACD9A9CA48638C70C1BD4D39088A74552BB9E8751B498A2B3EC3C9/11/ja

【公開日】令和5年1月24日(2023.1.24)
【発明の名称】ゲームプログラム、ゲーム装置、ゲームシステム、およびゲーム処理方法
【出願番号】特願2022-123323(P2022-123323)
【出願日】令和4年8月2日(2022.8.2)

これはトリカラバトルの特許である。

要約はシンプルであるが、第一請求項もほぼこのままの内容である。

【解決手段】第1グループの第1登場領域を当該ゲームステージの中央付近に設定し、第2グループおよび第3グループの第2登場領域および第3登場領域を当該第1登場領域より当該ゲームステージの端部側にそれぞれ設定し、キャラクタが所属グループの対応色に描画されている領域にいる場合に、当該領域にいない場合よりもゲームにおいて有利となるように当該キャラクタを動作させる。そして、各キャラクタの動作に基づいて第1グループの勝利条件である第1条件が満たされる場合には第1グループをゲームにおける勝者と判定し、第2グループおよび第3グループの勝利条件である第2条件が満たされる場合には、当該第2グループおよび当該第3グループを当該ゲームにおける勝者と判定する。

「キャラクタが所属グループの対応色に描画されている領域にいる場合に、当該領域にいない場合よりもゲームにおいて有利となるように当該キャラクタを動作させる」というスプラトゥーン以外ではあまり有効じゃない制限がかかっているのでそこまで広い特許ではないかもしれない。

図16などはトリカラバトルを知ってる人ならニヤニヤしてしまうような図である。

一方で、トリカラバトルの詳細について解説が記載されているのであるとき突然分割された内容が出てくるかもしれず油断ができない内容になっている。具体的には下記の図18である。今回の出願ではまったくこのような流れのゲームシステムについては請求の範囲に表われていないが他のゲームで真似をするものが出てきたときに任天堂はいろんな手段を検討できるような気がする。

 

 

特開2023-11544(P2023-11544A)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2023-011544/87A9F9C45883C93A8BB2D0A4AC3AAD0AD98FC8F850DF0A0B5B8D30C502B6CA45/11/ja

 

【公開日】令和5年1月24日(2023.1.24)
【発明の名称】プログラム、ゲーム装置およびゲーム装置の制御方法
【出願番号】特願2022-117066(P2022-117066)
【出願日】令和4年7月22日(2022.7.22)

 

 

スプラトゥーン3が前作より良くなった点は、ゲーム起動直後のステージ紹介の語り(バンカラニュース)をL3ボタンでスキップできるようになったことである。「あんなのスキップできるのが普通だろ」と思っていたのだが、なんとそれが特許として出願されていた。

 

【課題】ゲーム情報を適切に通知しながら、プレイヤキャラクタの操作を早期に開始させる。
【解決手段】コンピュータをゲームの実行中に表示するメッセージを決定するためのデータを取得するデータ取得部と、取得したデータに基づくゲーム情報を示す複数のメッセージが順次表示されるように第1画像を生成して通知する通知処理を実行する通知処理実行部と、通知処理の終了後に、ユーザによる第1操作入力に基づいて仮想空間内においてプレイヤキャラクタを移動させる移動制御処理を含むゲーム処理を実行するゲーム処理実行部と、通知処理の実行中にユーザによる第2操作入力が行われた場合、通知処理を終了してゲーム処理を開始する第1切替部として、機能させる。ゲーム処理実行部は、第1切替部によりゲーム処理が開始された場合、取得したデータに基づくゲーム情報を示す複数のメッセージが自動的に順次表示されるように第2画像を生成して通知する。

いったいどのようなポイントを特許として主張しているのか。下記のような感じだ。

  • ニュースをスキップしたあと、ゲーム画面に重ねてニュース内容を順次表示する(請求項1)
  • ニュース画面を表示するか、ゲーム画面に重ねてニュース内容を表示するだけにするかをシステムが判断できる(請求項2)。それは取得したニュースの内容で決める(請求項3) 上記を実装はするけどゲーム起動時は毎回ニュース画面からはじまるようにする(請求項4)
    … これはゲーム中にスケジュール更新があったときにスプラ2では毎回ハイカラニュース画面になっていてウザかったのが、スプラ3ではポップアップの表示だけになっているというアレだ。
  • データによってはニュース画面をスキップさせないようにする(請求項5)

なるほど。当たり前と思っているがここを書かれると確かにどこか新規なアイデアがあるのかもしれないなと思ってしまう。もし先行例を探さないといけなくなったらちょっとすぐには思いつかないような気がする。

順次表示する部分の説明に使われている図は下記のような感じだ。

 

なお歴代スプラのニュースの長さを比較した動画が下記に上げられている。スプラ3はそもそもロードが速くて快適なのだが、これはソフトが最適化されたのかカートリッジに入っているフラッシュメモリの性能が上がったのかどちらなのかはわからない。

www.youtube.com

特開2022-124255(P2022-124255A)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2022-124255/0151712E021E62040F98271A5D4A8EBFA507DBAB13042E24BE240522180A380D/11/ja

【公開日】令和4年8月25日(2022.8.25)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理システム、情報処理装置、および、情報処理方法
【出願番号】特願2021-21911(P2021-21911)
【出願日】令和3年2月15日(2021.2.15)

 

これは昨年9月の時点で公開済だった。どうして前回これを見逃したのか悔まれる。

スプラ3は2までと違いプレイヤーは空中のスポナーに乗って(あるいはスポナーにつかまって)出現し、着地点を選んでフィールドに入ることができる。ここで着地点を選ぶかわりにスーパージャンプの操作を行うことができ、その場合にはスポナーから直接目的の位置にスーパージャンプすることができる。この特許はまさにこのことについて出願している。

【課題】ゲームの戦略性を向上する。
【解決手段】情報処理システムは、少なくとも、敵オブジェクトの攻撃によってプレイヤオブジェクトが退場条件を満たした場合、当該プレイヤオブジェクトをゲームステージから退場させる。情報処理システムは、プレイヤオブジェクトがゲームステージから退場した後、(a)第1条件が満たされる場合、ゲームステージの第1領域内の位置であって、第1の種類の復帰入力により指定される指定位置に基づいてプレイヤオブジェクトを復帰させ、(b)第1条件とは異なる第2条件が満たされる場合、ゲームステージに配置されている所定の他オブジェクトの位置であって、第2の種類の復帰入力により指定される指定位置に基づいてプレイヤオブジェクトを復帰させる。

 

ここではキルされたことを退場と表しており、キルデスの概念がないゲームにおいてもリスポーンがあるなら同じでしょというようなことを示している。請求項を読むとわりとややこしい感じだが下記のフローチャートがほぼ全てである。

スポナーの絵がないか、図面を探したのだがなかった。残念。

 

特開2023-16051(P2023-16051A)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2023-016051/E99AD180AE40370FF3D4E14931F57C18B138697A91C4929263FE8ECD33D97F8D/11/ja

【公開日】令和5年2月1日(2023.2.1)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理システム、情報処理装置、および情報処理方法
【出願番号】特願2022-181366(P2022-181366)
【出願日】令和4年11月11日(2022.11.11)

これは撮影モードに関する特許で、プライベートマッチのさんぽだと通常は敵チームと戦える状態になっているのだけど撮影状態になったら無敵になって相手を殺せなくするよという、そういう機能を特許として請求しているようだ。確かに打ち合っている写真を撮りたいというのはあるしそこで相手が死んでしまうようでは写真を撮りにくいだろうからこの機能は必要である(自分にはSwitchで気軽に呼び出せる友達が居ないのでこの機能を試すことができてない)。

【解決手段】第1プレイヤの操作モードがキャラクタ操作モードの場合は、第1プレイヤによる操作に基づき第1キャラクタの動作制御を行う。また、第2キャラクタの攻撃動作によって退場条件が満たされた場合、第1キャラクタをゲームステージから退場させる。第1プレイヤの操作モードが撮影モードの場合は、第1プレイヤによる操作に基づき仮想カメラを制御し、その撮影画像を保存する。更に、第1キャラクタが第2キャラクタの攻撃動作によって退場させられないように、第1キャラクタに対する攻撃を無効化する、あるいは、当該攻撃による退場を無効化する。

 

 

 

これは出願日がスプラ3発売後となっているが、さんぽモードで写真が撮れるようになったのは11月30日のアップデートなので、きっちりその公開前に出願を完了させている。

請求項とか詳細な説明はちゃんと読んでないが撮影モードを示している下記のような図はあった。

 

特開2023-11546(P2023-11546A)

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2023-011546/172BC9A44C1A09E562EA830B5830CB46E5AA9FC5D93B9A0E1C9E4DE697027627/11/ja

 

【公開日】令和5年1月24日(2023.1.24)
【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理方法、および情報処理システム
【出願番号】特願2022-130264(P2022-130264)
【出願日】令和4年8月17日(2022.8.17)

これはインクの塗りをどうテクスチャ処理するかについて書かれた特許である。スプラ3の公開直前に出願されているのでスプラ2から3にかけて処理方法が変わったということなのだろうか。「要約」は下記のようになっている。

【課題】仮想空間内の所定の範囲が色更新イベントで更新された状態を表現する場合に、違和感のない表現が可能な情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理方法、および情報処理システムを提供すること。
【解決手段】接触判定用のコリジョンに基づき仮想面を生成する。更に、第1テクスチャと対応付けられたポリゴンメッシュを仮想面に対応付ける。色更新イベントの対象となる所定範囲がコリジョンに重なる場合、コリジョンと仮想面の対応関係に基づき、仮想面に対応付けされた第2テクスチャ上の座標の色を更新する。そして、第1テクスチャと第2テクスチャを用いてポリゴンメッシュを描画する。

うん? わりと普通のような気がするし、スプラ2でもこれくらいやってたんじゃないのか?

「発明が解決しようとする課題」には下記のようにある。

  上記のようなゲームにおいては、各キャラクタに対応するインクの色で塗られた地面の表現を行うために、仮想空間の全体を覆う大きさのテクスチャに対して、描画データに従ってインクの色を書き込んでいき、それを仮想空間に投影することで、仮想空間への描画を行う、という処理を行っていた。
  しかしながら、例えば段差がある場所や曲面等に対して、上記手法で投影する場合、インクが当たった箇所と、実際に塗られる箇所とにずれが生じる場合があった。例えば奥行き差や高低差のあるような場所付近にインクが当たった場合に、奥行き差や高低差が反映されず、インクが当たった箇所からすれば本来は塗られるべきではない位置にまでインクが塗られてしまう場合があった。

スプラ2までは「インクが当たった箇所からすれば本来は塗られるべきではない位置にまでインクが塗られてしまう場合があった」のかもしれない(あまり目立ってたとは思えないが)。どうにも釈然としないものがあるが、塗りのテクスチャともともとのポリゴンのテクスチャは2重に貼られており下記のような図で説明されていたりするので、塗りについてざっくりとした内部処理を知りたい人は読んでみると勉強になるかも。