自分の中でのIntel N100の評価がいまいち確定しない件、あるいはZenアーキテクチャのBig-Littleの件

Minibook X N100が届いて1週間が経った。やっぱりこのキータッチとタッチパッドのボタンは良くない。これまでMinibook Xのレビュー動画などをさんざん見てきたのだけどこのキータッチの悪さに触れていたレビューはほぼなかったのでなんだか残念だなと思ってしまった(ちょっと触って感触を見ただけで、誰もキーボードをまともに使おうと思ってレビューしてないんじゃないか的な意味で)。もともとキーボードの出来は悪いかもしれないなと思ってたし、もともとこれを買おうと思った動機が「N100プロセッサのGracemontコアの素性を体感したい」だったのでまあOKだなとも思うものの、でも国内ブランドのノートPCで8万円とかでこのキーボードがついてたらボロクソに言われうんじゃないかと思うような出来ではある。

 

 

やっぱりN100は速いし凄いと思った件

 

N100にはGracemontコアが4つ搭載されている。CineBench R23のシングルスレッドの結果は900くらいであった。前回のエントリでは896であったが設定を詰めていくと900以上が安定して出るようになった。何度窓とソファがレンダリングされるのを眺めたかわからん。

そして自分の使っているデスクトップPC、RYZEN 5 2400Gと比べてみたらどうかなと思ったがシングルスレッドではなんとデスクトップPCのほうが遅かった。まあ自分のPCは割と省電力な設定にしているししょうがない。

しかしオフィシャルの結果を見てもZen初代(Zen1コア)のRyzen 7 1700Xのシングルが959となっているのでN100の916はそれに肉薄している。

CineBench R23のシングルスレッドの結果。Zen1に肉薄している

このスクショだけ見ると0.81GHzのN100が3.4GHzのRyzenとあまり変わらない結果を出しているように見える。

これはすごい。Gracemont最強じゃね?

でもここにはトリックがあって、N100はシングルスレッド高負荷時には3.4GHzまでクロックが上がる(一方でRyzen7 1700Xは3.8GHzまで上がる)ので、これはGracemont@3.4GHzとZen1@3.8GHzの結果の比較していることになるかもしれない(実際にHWMonitorなどでクロックを見ていると3.4GHzに張りついているわけではなく2.9GHzによく落ちている状況だったが)。でもそれでもZen1コアと同じクロックで同じくらいの性能が出ているのであればそれはすごいことだ。

Cinebenchだけを見てそんなこと言えるのかとも思ったのだけど、 PassMarkの結果などを見ても同じ傾向だったのです。

Zen1以前のCPUはもう過去の遺物と化しました。僕のRyzenデスクトップPCは速やかにCeleron N305のミニPCにリプレースするべきな気がしてきました。

 

でもやっぱりN100は微妙じゃねと思う件

しかし3.4GHzという高クロックで動作させて速い速いというのは果たして自分が望むCPUなのだろうか? なにか違うような気がしてならない。そもそも3.4GHzくらいのクロックが必要な領域ならそれはEコアのGracemontよりもPコアのGolden Coveの得意とする領域なのではないか。

そのあたり、Chips&Cheeseというサイトに調査した結果が載っていて、過去に読んでいたのだけど再度見返してみた。

Alder Lake’s Power Efficiency – A Complicated Picture – Chips and Cheese


このページの中のほうにある下記のグラフはいろいろな最大周波数の設定で7-zipベンチマークを実施したときの電力消費量をプロットしたものだ。横軸がクロック周波数で、縦軸が消費されたエネルギー量となっている。

https://i0.wp.com/chipsandcheese.com/wp-content/uploads/2022/01/image-22-1.png?w=938&ssl=1

Alder Lake’s Power Efficiency – A Complicated Picture – Chips and Cheese

 

これを見ると3.5GHzあたりでGracemontとGolden Coveの電力消費が同じくらいになっている。N100の最大周波数が3.4GHzになっているのもこのあたりのデータを見れば納得できる。ただ、同一クロックではGracemontよりもGolden Coveのほうが性能が良いので、3GHz以上でGracemontをぶん回して速いぞというのはなんだか微妙な気がしてしまう。

 

そして注目すべきは読み進めた先にある次のグラフである。こちらはコア部分の消費電力を横軸に、libx264と7-zipのパフォーマンスを縦軸にプロットしたもので、グラフが上になればなるほど性能が高いことを示している。そしてこのグラフにはZen2コアを搭載するデスクトップ版のRyzen 9 3950Xとモバイル版Ryzen 4800Hもプロットされている。

https://i0.wp.com/chipsandcheese.com/wp-content/uploads/2022/01/image-25-1.png?w=939&ssl=1

https://i0.wp.com/chipsandcheese.com/wp-content/uploads/2022/01/image-26-1.png?resize=768%2C363&ssl=1

Alder Lake’s Power Efficiency – A Complicated Picture – Chips and Cheese

見てわかるようにあらゆる電力ゾーンでRyzen 4800HがGracemontを圧倒している。Total Core Powerの計測方法がIntelAMDで異なっている可能性があり、たとえばRyzen系は1〜2W程度右にズレたグラフになる可能性もあるがそれでも10W周辺ではGracemontの1.5倍以上の性能をZen2コアが出していることになり、どう考えてもZen2がすごすぎてGracemont単体では勝ち目がない感じになる。

やっぱりN100は安いだけで微妙なチップなのかもしれない。Ryzen 4800Hのほうが省電力で高性能。

 

一方でZen2のコアはモバイル版は2Wから25Wまで、デスクトップ版は7Wから35W強くらいまでの電力レンジしかサポートできていなくて、いまのIntelのチップがRyzenよりも優位に立てているのはEコアとPコアを組み合わせているからだということがよくわかる。GracemontとGolden Coveのグラフの重なりと、3950Xと4800Hのグラフの重なりは非常に似通った形になっていて、AMDがZen4世代で「同じアーキテクチャのコアでBig-Littleをやる」というのも全然現実味が感じられるのだった。