Amazon Dash Buttonに思う

Amazon Dash Buttonは何がヤバいのかっていうエントリにもやもやしたので書く。


僕がとある家電メーカの研究所にいたころ、IoT的なものは当然のように作りまくっており、たとえば家電製品を全部ネット経由で遠隔操作する、しかしそれだけではメリットないのでいろんなものを同時に動かすスケジューリングをビジュアルプログラミングしていくとか、家族内のコミュニケーションツールと連動させるとかそういう話をいっぱい考えていたわけです。1997年ごろから2015年くらいまでたまに試作とかデモを作っては潰しというのを繰り返していたのです。


Raspberry PIでGPIO叩いて、なんてやっててもいいけど、僕らがそういうのをやっていたのはもう20年前の話です。だってコーヒーメーカーがインターネットにつながってたんですよ? 当然同じようなことやるでしょ。


冷蔵庫にマグネットで張り付けれる1ボタンだけの電池内蔵式のデバイス、というのはそんな中で何度も出てきていて、最初は赤外線だったり、途中BTを検討しようとしたけどペアリングの仕様が微妙だったりしていたなか、WiFiでやればいいじゃん、あるいはBLEで、ってなってきたのが2012年ごろで、そのときに考えたビジネスモデルに、このAmazon Dash Buttonとほとんど同じような「牛乳とかビールとかのボタンだけのデバイスで、それを押したらとにかくそれが注文されて届く」というのがあったんです。そのボタンデバイスは500円くらいで作れそう、電池も1年持てばいいや、みたいなのを考えたときに、大きな問題があったんです。



僕らがAmazonじゃなかったことです。ビジネスモデルは思いつくし、デバイスも作れるんです、でも僕らはAmazonじゃないんでそのビジネスはできなかったんです。


だから、その、日本メーカにあの発想はなかった!!みたいな話されるととてもつらいです。そんな精神論はもう20年前からずっと言われ続けてるんで…


でも電池が切れることを逆に利用しているってところはすごいね。そこはあまり考えてなかったよ。



「あんな電池が1年で切れるデバイスは使えない」
そんなこというやつは未来が見えてないヘボなので無視すべきです。あるいは具体的にそういう文句を言ってくるお客様が脳裏に浮かんでいるからかもしれません。だからB2B主体になりつつある今のメーカではだめなんです。
僕が2006年ごろに会社に持って行ってみんなに見せびらかしたものに
「ボタンを押すとスーパーマリオのコイン取ったときの音が鳴るだけのおもちゃ」
がありました。200円のガチャガチャに入ってたものです。僕らはCR2032あたりの電池で半年くらい使えて使い捨てってやつが大好きでした。