和歌山と淡路島をつなぐ深日航路は復活できるのだろうか

下記のような過去のニュース記事を見かけて少し調べた。

 かつて大阪府岬町の深日(ふけ)港と兵庫県・淡路島の洲本港を結び、明石海峡大橋の開通などで平成11年に廃止された連絡船航路を、岬町が22日、来年秋にも復活させる方針を明らかにした。関西国際空港の利用などが好調なためで、復活すれば「需要が期待できる」と判断した。一度廃止された連絡船航路の復活は全国的にも珍しいという。

http://www.sankei.com/region/news/140923/rgn1409230017-n1.html


最初のツッコミとしては、「いやいや、岬町が方針を決めたところで何かできるわけじゃないでしょこれ」って感じなんだけど。


昔淡路島に行く時に深日海運の深日〜洲本路線に何度か乗った。高速船だと30分くらいの所要時間であり、難波〜深日港南海本線経由で1時間くらいだったので、深日港での待ち時間が運良く短くて済めば2時間未満で淡路島に行くことができた。これだけを考えればそれなりに競争力がありそうな気がするんだが、そう単純な話でもなさそう。


ライバルとなる淡路島向けの公共交通機関を考えると、今だと高速バスくらいしか選択肢がなく、くにうみライナーというやつが三宮BT→洲本BCを1時間17分で結んでいる。これは速い。梅田からだと三宮までJRで25分くらいなので難波以北の客は奪えない。


そんなわけでこの記事では難波以南の客を100%獲得できるという結論により採算が取れるとしているが、ここは相当に疑わしい。

府内全域から電車とバスを使い、明石海峡大橋を利用する陸上ルートや、兵庫県の明石−淡路・岩屋間を高速船(淡路ジェノバライン)を利用する海上ルートと、連絡船を復活させた場合を比較。その結果、24ノット小型高速船(19トン、旅客定員63人)を導入して深日−洲本間を約35分で結んだ場合、大阪・難波以南の客を100%獲得できると予測。1日7往復、片道運賃千円に設定した場合、年間利用者は往復19万人に達し、十分な黒字が見込めるとした。


まず復活の動機になっている関空であるが、もし自分が淡路島の住人で、関空に降り立ったときに、リムジンバスで淡路島に帰るのと、電車を乗り継いで船に乗って帰るのとどっちがいいかと考えたら、運行時刻のタイミングにもよるが、前者を選んでしまいそうな気がする。だからこの時点で客を100%獲得できるという予測の信憑性が怪しいような気がしてしまう。往復19万人は一日あたり520人、平均で1便あたり37人が搭乗することになるがそんなにうまくいくかどうか…。


そもそも深日海運が経営悪化で廃業したのは97年2月であり、明石海峡大橋が供用開始になるより前の話である。なぜ経営が悪化したかというと、関空ができたことにより他社が関空〜津名や関空〜洲本間の航路に参入してきたことで、大阪へのルートが複数できて競争環境が激化したからであった。追い打ちをかけたのは明石海峡大橋であることは間違いない(競争激化したところに需要減になるとまあ死ぬよね)と思うが。


いろいろ考えたけど深日港へのアクセス向上や、その周辺のアピールをどれだけ南海電鉄が本気で進めるかにかかっている感じ。「今後トップセールスをして、船会社にも協力を求めたい」とのことだが、南海グループが手を挙げてくれるのが一番望ましく、みさき公園とか徳島〜和歌山間の南海フェリーとかと合わせたうまい運営できればいいなと思う。