http://biz-journal.jp/2013/09/post_3005.html
ツッコミどころが多すぎてなにから書いていいのかわからん。
最初はこうである。
この「選択と集中」には2つのリスクがある。1つは、当たり外れが大きいということだ。特定分野に特化するということは、外部環境の変化に大きく左右されることがある。一発当たれば儲けは大きいが、ハイリスク・ハイリターンの戦略なのである。
これはわかる。しかしそれについて例を上げて説明するなら、たとえば、
「切り捨てなければよかった事業を切り捨ててしまった(切り捨てた当時は赤字だったけど我慢して持ってれば儲ってたハズ!!)」
あるいは
「集中投資した部門がいま超大赤字で今後成長の見込みも全然ない」
かどちらかを言うべきなのではないか。
しかしその後「東芝のケースで見るとわかりやすい」から繋がる流れが、これである
そして東芝は、半導体と原子力発電を経営の二本柱に掲げた。両事業に経営資源を集中する一方、音楽事業の東芝EMIや銀座東芝ビルを売却。第三世代の光ディスクHD DVD事業から撤退した。
さすがにこれは… 選択してレコードやCDを切り捨てたり、HDDVDから撤退したのが、失敗だったというのかい?
じゃあHDDVDから撤退してなければ今頃レコーダ部門は大儲けだったとでも? そんなわけないだろ。
「HDDVDの失敗と同時にレコーダから撤退した」とかならわかるよ? でも東芝はレグザブルーレイをしぶとく出しているんである。それは選択と集中とは程遠いスタンスじゃないかな。
そして唯一それらの「選択と集中」(いや、僕には東芝が選択と集中を進めているようには全く見えないんだが)が失敗だったと結論づける論拠が2013年3月期の決算である。
東芝の13年3月期連結決算(米国会計基準)は、「選択と集中」の結果を示す通信簿となった。売上高は前期比4.9%減の5兆8002億円、本業の儲けを示す営業利益は4.1%減の1943億円で、2年連続の減収減益である。
売上高と営業利益下がりました。だから失敗でした。という話だが、この利益減は東芝の決算説明会資料(http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pdf/tpr2012q4.pdf)では「液晶ディ スプレイ事業譲渡の影響」と説明されている。液晶ディスプレイを譲渡しなかったほうがよかったとでも言うのだろうか。それならそう主張すべきだ。「これから伸びるはずのモバイル向け液晶を切り離してしまったのは失敗だった」みたいに書くべきだ(でもこの記事を書いた人にはそれを書けるほどの勇気はないんじゃないかな)。
多くの事業部門は増益で、減益なのはパソコンくらいである。半導体はディスクリート・システムLSI・フラッシュメモリ全部で減収しているが増益である。こう説明されている。
- 「メモリの減産および高付加価値製品 の拡大による収益性改善を進めたこ とに加え、システムLSIの事業構造改 革効果もあり、部門全体で増益」
電子デバイス事業全体として売上高13353億円に対して利益が960億円はあまりににも立派な成績だ。
ディスクリートは日本のアホな経済オンチどもが嫌うコモディティである。システムLSIは明らかに黒字が出なさそうな代物である。この半導体部門の黒字のかなりをフラッシュメモリが稼ぎだしていると推測される。もしディスクリートやシステムLSIが利益を稼いでて増益になっているのであればそもそも「選択と集中してなかったのでバッチリOKだった」だし、フラッシュメモリが稼いでいるのなら「フラッシュへの集中投資は正しかった」ということになる。
次に原子力が含まれる社会インフラのところである。前述の東芝の決算説明会資料にはこう書かれている。
- 「国内原子力の減収による影響などがあるものの、火力発電システム が好調で、太陽光発電、ランディ ス・ギア社、系統・変電、エレベー タ、医用システムなども増益となり、 部門全体で過去最高レベルの利益を達成」
これを読むと「原発はいまいちだったけど他の部門いっぱいあって全体的に良かったんで結果としては最高でした」である。選択と集中していたなんて嘘だったのである。
東芝はフラッシュに集中投資していたけどいろんな部門を切り捨てたりはしていなかった。東芝経営陣が「選択と集中」と一時期謳ってたのはそれを社会が強く要求したためにポーズとしてそういう説明をしていただけであった。
全体として、今、選択と集中がうまく当たった企業ほどはうまくいっていないので、これからいろいろ切り捨てにかかるかもしれない。