日本の家電はどうして高機能化一辺倒なのか(北米と比べて) - キャズムを超えろ!
読んでて、いろいろ僕の認識とは違うところがあるなと思った。
特に
たまに中堅メーカーの誰かが浮気して、ロースペックな商品を市場投入したとする。例えば先のAIPTEK製ビデオカメラのような商品をF社なりが出したとしよう。そうすると、体力に余裕がある大手メーカー(PとかSとか)が、利益率無視でさらに安い(あるいは同価格でスペックが少し高い)商品を突っ込む。結果、体力のないF社は価格についていけず低価格商品から撤退。それをみて大手メーカーは低価格商品そのものをやめてしまう、あるいはモデルチェンジのタイミングでじわじわと高性能化させて価格を引き上げていくことで市場をもとの健全な「ハイスペック品ONLY」の状態に戻すことができるというわけだ。競合プレイヤーの数が限られているうちはこの戦略が通用する。日本の家電メーカーの数なんて知れているのだから、数社をこれで蹴落としてしまえば当分安泰である。
このくだりは酷い。まるで他社を蹴落とすために赤字販売するかのような書き方だが、こんなことはさすがにない。よく見かける流れはこんな感じ。
- 大手メーカS社もたまにロースペックな商品を先行的に出してみたりするが、たいてい赤字が出てすぐ撤退する
- 無名なメーカーE社はロースペック品を継続して出していたりもして、それはそういう商品ジャンルを形成していてちゃんと売り場にも並んでいるのだが、大抵の場合は売れないか、大手が出しても赤字になるような程度のシェアなので無視されている。
- たまにE社がうまくマーケティングでき、ロースペック品がヒットしたりする。新しいジャンルが消費者に認知される感じになる。
- そのジャンルが消費者に広く認知されると、大手メーカS社が出してもそれなりに利益が出せるくらいの規模が見込めるようになる。量販店にもコーナーができるし。
- S社がロースペック品を商品ラインナップに加える。ここでE社とS社の違うところはS社には幅広い商品ラインナップが存在するところ。すぐにロースペックからハイスペックまでの商品ラインナップがスキマなく埋まる
- 消費者は最初のうちはロースペック品を買って喜んでいるがしばらくするとちょっと高い金額を出して中くらいのスペックのものを買ったほうが幸せだということに気づいてしまう。
- ロースペック品が売れなくなり、利益の出ない商品になり、S社はそこから撤退する。
あるいはイヤホンとかヘッドフォンだとどうだろう。100円から50000円くらいまでのあらゆる価格帯のものが日本では売られてて、ソニーは1000円から上しか出してない(880円で売ってることもあるけど)。それより下のものは出しても利益が出ないから出さない。ブランドを守るために出さないとか言うけど、そりゃソニーブランドで100円のイヤホンは出せないだろうと思うよ…。でも1000円の商品は出してるわけで、「高級品」を維持したいからという感じでは全くないんじゃないか。
そんな状態なのに100円のものも結構売れてたりするので、「日本人が"異常なまで有名家電メーカー品(特に国内モノ)にこだわる"という特性がある」ような感じは全然しない。
つまり僕は日本人は有名家電メーカにこだわってないと思っている。
しかし家電量販店に行くと有名家電メーカーのものばかりが売れている印象を受ける。でもそれはある意味当たり前で、家電量販店で売れてない有名家電メーカーってそれは形容矛盾だし。いわゆるヨドバシとかの家電量販店は、高級品を中心に売るデパートなのであり、安物ばっかり売っている店は別にあるんだ。イヤホンだったら500円以下のものはダイソーだし、1000円くらいのものはTSUTAYAとかローソンとかになる。掃除機やテレビやコンポだったらドンキホーテにアホみたいに積んである。でもそういうのは日本人は「家電」とは認識していないんじゃないか。だから日本では「家電」は高級品しか売れないんだけど、それは安物になったとたんに「家電」じゃなくなってしまうからなんだ。
ビデオカメラについてはさらに状況が違う。まず、480Pで適当なレンズで30fps程度の動画が撮れるお手軽なカメラを欲しいと思っている層は結構居ることは分かっている。で、そういう需要があることはわかった結果、携帯電話かデジタルスチルカメラにその機能が追加されてしまった、というのが現状。720Pが撮影できる携帯電話はまだないけど多分来年には出てくるよね。そしてデジカメには結構ある。いま調べたところパナソニックのDMC-FX35の最安価は19,950円で、これで720Pの動画が撮影できる。日本では大抵の用途にはこれで十分なんだと思う*1。
*1:日本ではビデオカメラはデジカメが使えない用途にしか使われないのであり、つまり運動会撮影用、結婚式や発表会の撮影用であって、前者には高倍率ズームと性能のいいAFが、後者には明るいレンズが必要になるので、そういうものを備えたビデオカメラしか売れないのではないか