エアリズムを畳めなかったのは事実だと思うけどさ

日経ビジネスにLaundroid(ランドロイド)の記事が出ていて、まるでパナソニックの完璧主義によって発売ができなくて倒産した、みたいな印象を与えており、ブコメを見たところたくさんの人が騙されていて失笑してしまった。

 

畳めなかったエアリズム 全自動折り畳み機、事業解散へ:日経ビジネス電子版

ロボットアームの開発に苦戦しているという。アームは様々な種類の布を持ち上げられるが、どうしてもつかめない素材があるとのことだった。

 それが、カジュアル衣料品店ユニクロ」の人気商品「AIRism(エアリズム)」だった。シルクのような肌触りが特徴だが、それだけにロボットアームが扱うのが難しかった。完全な製品を世に出したいと考えるパナソニックは、この点を重く受け止め、発売に難色を示したという。

 うん。嘘は言ってないかもね。アームをもし作っていれば。そしてアームがエアリズムをつかめなかったのも本当だと思う。でもこれは典型的な詐欺師の言い方だ。

「ロボットアームの開発が難航している」「エアリズムをつかむことができない」ということを言われたら、素直な人はそれ以外はできていると思ってしまうのだ。でも、ロボットアーム以外のいろいろな機構部品はまだ開発を始めてすらいないという可能性があるのだ。そしてエアリズムがつかめないのは本当のことだけど、普通の長袖のシャツやジーンズなどもたぶんうまくつかんで平らにすることができなかったのだ。僕はLaundroidが半袖シャツ以外を畳んでいるデモを見たことがない。

 

僕のように「他社のXXのようなことがしたい」と言われて作らされる仕事ではなく、独創的な技術開発をしているなら、当然特許を出願するはずだ。そこでどこまで開発を進んでいたのかを知るために、セブンドリーマーズ(と株式会社アイ・エス・ティ)が出願した、布製品の折り畳み装置に関する特許を検索した。見つけることができたのは12件だけだった。そのうち丸まった衣類を平らにするという部分に関する特許は下記の3件のみであった。

・特開2010-561 特許第5145605号 変形性薄物展開装置

・特開2010-562 特許第5145606号 変形性薄物展開装置

・特許第5299934号 変形性薄物展開装置および変形性薄物展開方法

実際のところ最初の2件はわりと初期の特許っぽくて、なぜかというとタオルやシーツのような矩形の1枚ものを対象にしているからだ。シャツやパンツのような衣類は、平面に広げるときに腹側と背中側の布地の幅を一致させるように広げる必要があるので、単に端っこをもって引っ張れば広がるタオルと比べると難易度がかなり高い。

最後のものは、意外にもちょっとリアルに開発を進めていたような気配が伺われた。タオルやシーツだけでなく半袖のシャツも対象にしていたからだ。しかしこの特許の技術いても可能なのはせいぜいTシャツやポロシャツを広げる程度で、長袖の衣類に関してはより難易度の高い別の技術が追加で必要となりそうだ。衣類が裏返っている場合に裏返す技術や、ボタンが外れているか外れていないか、外れている場合にどのように止めるかなども、出てきた特許には記載がない。

 

気になるのは検索して出てきた特許がすべて2011年以前に出願されたものだということだった。そうすると真相はわからないが僕の妄想では下記のような感じ。

  • たぶん2012年ごろまでは真面目に技術開発を試みていたが、あまりの難易度の高さに挫折した
  • 資金繰りが厳しくなってきた彼らは、プレゼンにより大企業から資金をgetし、CEATECでハリボテの発表を行った。
    (これはハリボテじゃなく、特定の衣類ならたためるものが出来上がっていた可能性がそれなりにあると思っている。デモに半袖シャツをわざわざ選んでいるので)
  • とはいえ持っている技術では大々的にプレゼンしたようなものを作ることは不可能なので、とにかくシャツだけでもたためるようなものを作って世の中に出す方針となった。
  • そんな中でエアリズムに代表されるさらさらの下着を処理できない問題にぶちあたり、エアリズムだけでなくわりとたくさんの衣類がそれに該当するというしょぼい状態だったので、解決するまで実物を公開できない状態に陥った。
  • 「エアリズムがつかめないので発売延期」と発表したところ、「エアリズムだけが特殊で、あと少しで完成する」というような好意的が解釈がなされてしまったため、しばらく延命してしまった。

 

重ね重ね言うが上記は妄想でありたぶん真実ではないはずだ。真相が究明されることを楽しみにしている。